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北朝鮮の準軍事組織・労農赤衛軍の兵士ら(ウェブサイト「朝鮮の今日」)
「2007年には、脱北者が鴨緑江に入って半分のところまで進んでも、国境警備隊『止まれ!止まれ!』というだけで、銃は撃てなかった」
これは、2007年に北朝鮮から逃れた脱北者が、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RfA)に語った内容だ。
かつての北朝鮮は、中国との関係に気兼ねして、国境地帯での銃撃は行わなかったという。だからといって、逮捕した脱北者の扱いが良かったというわけでは決してない。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
状況は、金正恩政権に入ってから変化した。国境を越えようとして射殺される人が相次いだのだ。国境警備は年々厳しくなり、新型コロナウイルスの感染が全世界的に広がった2020年に至っては、国境に近づく者は人間も動物も射殺するに至った。
(参考記事:「人間も動物も無条件で銃撃する」北朝鮮警察、コロナ対策で警告)
デイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部情報筋の伝えた話は衝撃的なものだ。
両江道(リャンガンド)金亨稷(キムヒョンジク)郡を流れる鴨緑江で先月24日の夜、女性が射殺される事件が起きた。
当局は、国境地帯に午後6時以降の夜間通行禁止令を出しているが、警備の兵士は、闇夜に動く人影を見つけ、密輸業者だと判断した。「容赦なしに銃撃してもよい」との命令を受けていた彼は、当然のように引き金を引いた。
射殺されたのは、近隣の村に住んでいた40代女性のチャンさん。密輸業者ではなく、小児マヒを患って障害を負い、老いた母親に介護されて暮らしていた。
地域一帯に夜間通行禁止令が出ていたことを認識できていなかった彼女は、母親がウトウトしている間に、いつものように2リットルのバケツを持って、水を汲みに鴨緑江にやってきたところを狙撃されたのだった。
母親は、第7軍団の指揮部に押しかけ、怒りをぶちまけた末に、気を失ってしまった。
「村の外の道すら知らない娘がどんな反動分子で、スパイだというのか。娘を返せ!」
しかし軍団当局は一切の謝罪も補償も行わず、むしろ発砲した兵士を「党の意図どおりに国境地帯の衛戍勤務を規定通りに行った功労を認める」として、朝鮮労働党への入党手続きを進める方針だ。
同軍団は元々、咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)に駐屯しているが、新型コロナウイルス対策としての国境警備を強化するために、一部の部隊がこの地に派遣されていた。地元とのしがらみのある国境警備隊では、冷徹な判断ができないとの判断からと思われるが、地元の事情に疎いがゆえに、このような事件を引き起こしてしまったというわけだ。
第7軍団は、事件で兵士の間に動揺が広がるのを防ぐために、当該の兵士を表彰したというのが、情報筋の説明だ。
さらに朝鮮人民軍総政治局では、今回の件を模範事例として持ち上げて、来年1月開催予定の朝鮮労働党第8回大会の前に、国境警備で功労のあった兵士の表彰、入党、大学への推薦を行えとの指示文まで下した。
一方の地域住民の間では、7軍団が業績づくりのために、人を次から次へと殺しかねないという恐怖が広がっている。
「人を獣のように殺したのに功績扱いした、7軍団はさらに残忍に銃を撃ちまくるだろう」
「来年の党大会までは息を潜めて暮らそう、殺されるかもしれない」
当局は「党と大衆を分離させる行為」、つまり、民心を失うようなことをすれば厳罰に処すると繰り返し指示をしていたが、現状では金正恩氏の射殺命令が優先されている。地元の国境警備隊ならば、報復を恐れてここまではできなかっただろう。
(参考記事:濡れ衣の女性に性暴行も…悪徳警察官「報復殺人」で70人死亡)
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