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時代を見通す日本の基礎情報

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モンゴル帝室に女性を献上していた「高麗時代の朝鮮」

東京・新大久保界隈では、韓国料理店や商店の相次ぐ閉店に「韓流離れ」の加速が報じられるなか……

 NHKでは韓国時代劇の新シリーズ「奇皇后」(8月3日放送開始/BSプレミアム毎週日曜夜9時~)が始まった。

 韓国時代劇においては、

「その歴史改ざん願望がドラマに凝縮されている、もはや韓国の歴史=脚色されたファンタジー」(東洋史家・宮脇淳子氏)

 と、史実の都合のよい歪曲が指摘されがちな昨今の背景を慮ってか、番組HPには、

「実在した奇皇后の人生をダイナミックにアレンジし、感情を揺さぶる愛と闘いを壮大に描いたエンターテインメント・ロマンス史劇」

「このドラマは実在した奇皇后を題材に創作したものです。架空の人物や事件を扱っており史実とは異なります」

 と、念の押しようだ。

 ストーリーは――

 13世紀末から14世紀中頃。

 モンゴル人による王朝・元に服属していた高麗(コリョ)に生まれ、元への貢女(コンニョ)という境遇から皇后にまで上り詰めた女性「奇皇后」が主人公。

「元の皇帝、そして高麗の王、ふたりとの運命的な愛。その美しさと野望、才覚で強国・元を揺るがしながら、決して失わなかった高麗人としての誇り―」(番組HP)

 元と高麗という二つの国家と両国の男の狭間で生きた女性の、波乱の人生が描かれているという。

 早速、見てみると……

 主人公で高麗の少女ヤンは元への貢ぎ物「貢女」として、母や多くの女たちと共に連れ去られる途中、逃亡するが、ヤンの母は追ってきた元の将軍に殺されてしまう。ヤンは身を隠すため少年に姿を変え生き延びていく。父母ともに元の圧政による無念の死を遂げたことで、少女ヤンは元への強い復讐心を抱いている。

 というわけで、登場するモンゴル人たちは、徹底的な悪人に描かれる。

「この高麗人の目玉をくり抜き、耳を削ぎ、舌を抜き、生かしたまま見ることも話すことも聞くこともできぬようにするのだ!!」とのむごいセリフの後、焼きゴテがあてられ……ギャアアアーーー!!!……

 と韓国時代劇によくある凄惨な拷問シーンも頻繁に登場する。

 土足で高麗の地を踏みにじり、朝鮮の女性たちを略奪、凌辱する元の兵士、という構図が強調されている印象だが……

 実際、元朝と高麗との関係はどのようなものだったのか。

 内モンゴル出身のモンゴル人で静岡大学・楊海英教授(歴史人類学)が解説する。

「正直なところ、モンゴル人の歴史観では、かつて朝鮮半島はモンゴル帝国の属国であり、モンゴルの血統で権威を確立していた国であるという印象があるのは事実です。同様に、清に対しても戦争に敗れて臣下の礼をとり、属国となったことは史実として残っています。ほかの朝貢国と比較すると、朝鮮半島の場合は代々シナ王朝の『属国』であった実態が伴っているのです」

 また、高麗時代の朝鮮がモンゴル帝室に女性を献上していたというのは驚きだが、これは韓国ドラマが得意とする創作上の悲史などではなく、史実にあるのだという。

「元朝時代では、高麗は長らくモンゴル帝国のハーン一族、帝室の『婿殿』の立場でした。代々、大都(北京)のモンゴルの帝室から娘を貰って、高麗王の皇后としていました。その子供が新たに王になれば、再びモンゴルから妻を娶るのです。元朝はそのような方法で、朝鮮半島をコントロールしていました。一方、高麗側は常にモンゴルの歓心を得ることに心を砕いていて、日本に対する二度の『蒙古襲来』も、最近の研究ではフビライの娘婿である高麗・忠烈王が、義父の前で手柄を立てたかったので、やたらと侵略を進めたことがわかっています」

 ドラマにも登場する「高麗貢女」という仕組みは、そんな高麗のしたたかさから生まれたのだという。

「朝貢の一環として、朝鮮の良家の娘たちを集めて元朝の帝室に差し出すというもので、高麗貢女は、例えば宮廷に入って皇后や王族のそばで働きながら、できうればそこでエリートを見つけて結婚することが望まれていました。帝室内に高麗の身内を送って発言力を増していこうという、高麗なりの生き残るための術だったのだと思います。儒教思想のもとでは女性の地位が低いので、そういう発想が生まれたのでしょう」

 しかし、これは「モンゴルが強制したのではなく、高麗側が自ら進んで編み出したシステムであった」と楊氏。

「モンゴルも実は高麗の魂胆をわかっていて、王族は高麗貢女と結婚してはいけないというしきたりがありました。モンゴルの大ハーン一族は、代々通婚する有力な部族があるので、必ずそこから后を選んでいたのですが、元朝最後となる皇帝・順帝トゴン・テムルが高麗貢女(奇皇后)を后としてしまいました。元朝が滅んだのはそれが理由だとモンゴル人は信じていて、モンゴルの年代記にも、元朝が滅んだのは祖先のしきたりを破って高麗貢女を貰ったからだと記されています。史実としてはそうした側面もあります。その高麗貢女は、モンゴルのしきたりを無視して後宮で権力を振りかざしたので、帝室に対する王族の離反を招き、ひいては反乱が広がっていったのです」

 奇皇后が産んだ北元の皇帝・昭宗=アユルシリダラは後に明軍に追われ、カラコルムの地で没したという。そして、不詳とされる奇皇后の末路は、ドラマではどう描かれるのか……。

 韓流時代劇は、“真実の歴史” を知った上で観れば、もっと面白い! かもしれない

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