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【上海=河崎真澄】中国の習近平指導部が推進する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」が難航している。パキスタンやネパール、ミャンマーで中国が関与するインフラ建設案件が、相次いで中止や延期に追い込まれた。明らかになっているだけでトラブルは4案件で、建設費用は総額761億ドル(約8兆6千億円)に上る。パキスタンなどにとり、支援の見返り条件が厳しすぎる上、軍事転用の疑念もぬぐえず、中国の“ゴリ押し”に不信感を抱いた点が背景にある。
香港の鳳凰衛視(フェニックステレビ)などによると、中国が総額で140億ドルの資金援助と建設作業を申し出たインダス川上流のダムと水力発電所の建設案件で、対象国のパキスタン側が受け入れを断った。
完成後のダムの所有権や運営権を中国側に譲渡することが支援の条件だったため、パキスタン側は「国益に反する」と判断した。また、中国企業が参加して工事が始まっているパキスタンでの鉄道やパイプラインなど総額560億ドルの大型案件も、複数の建設地点で中断が確認されている。
ネパールは総額25億ドルの水力発電所の建設で「重大な疑念がある」との理由で中国の支援受け入れを断念した。年明けにも正式契約の予定だったが、中国企業による不正な資金の流れが発覚したもようで、発注先変更のため延期された。ミャンマーでも、中国の支援で始まっていたダムと水力発電所の総額36億ドルの建設が中断した。環境問題など住民の反発が強く、ミャンマー当局は工事は再開しないと表明している。
このほかバングラデシュでの港湾、インドネシアでの高速鉄道なども計画通りに建設が進まず、「一帯一路」に連なる多くの案件が暗礁に乗り上げている。
こうした事態に対し専門家は、「国際ルール無視で中国方式のみで対外支援を強行し軋轢を生んだ」と指摘。中国企業の多くは、入札時は低価格で落札しながら着工後に理由を付けて追加費用を要求したり、政治先行で契約交渉を進めて法的な裏付けを後回しにしたりするなど独善的な姿勢が目立ち、反発を招いた
日中関係筋は、「中国企業が今年7月、スリランカ南部のハンバントタ港で11億ドルで99年間の長期貸与という事実上の租借契約を結び、この港湾を軍事拠点化する疑念が強まったことをみた周辺国が、中国からの支援受け入れに拒否反応を示した」と考えている。
中国の「一帯一路」構想は軍事転用だけが目的ではないにせよ、中国が支援先から信頼を得られていないことは事実。このところの中国の対日接近も、日本政府や民間が長年積み重ねたODA(政府開発援助)などの対外支援ノウハウの吸収や、日本の信用力を利用する狙いがありそうだ。