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日米の有事態勢は 米軍は空母増派が「サイン」

 緊迫化する北朝鮮情勢をめぐり、トランプ米政権は軍事力行使を選択肢に含む牽制(けんせい)の動きを続けている。現在でこそ米海軍の原子力空母カール・ビンソンが日本海に展開するなど米軍の威力を誇示する段階にとどまっているが、4月27日にはトランプ大統領が「北朝鮮との非常に大規模な紛争に行き着く可能性は当然ある」と発言した。トランプ政権の軍事オプションを実行する米軍はいかなる態勢で北朝鮮と向き合っているのか。そして自衛隊はどのような役割を果たすのか。(千葉倫之、杉本康士)

自衛隊は対潜水艦戦や後方支援を想定

 

 カール・ビンソン米軍が10隻保有する原子力空母の1つ。同艦を中核とする第1空母打撃群は駆逐艦2隻、巡洋艦1隻などで構成される。FA18戦闘攻撃機約50機のほか、早期警戒機や電子戦機など約70機の艦載機を搭載している。


 ただ、カール・ビンソンが展開しただけで対北朝鮮攻撃を実行する態勢が整ったとは言い難い。湾岸戦争やイラク戦争など米国が過去に遂行した戦争では、いずれも複数の空母が同時展開して作戦に従事した。航空自衛隊関係者は「現段階では北朝鮮を威圧する政治的な行動にとどまっている」と語る。

5月上旬に定期整備を終える米海軍第7艦隊の空母ロナルド・レーガンに加え、米本土から空母が周辺海域に展開すれば、米国が本気で準備に入ったサインだと捉えることができる。


 トランプ氏が軍事行動に踏み切った場合、日米防衛関係筋が可能性が高いとみるのが、北朝鮮の核施設や大陸間弾道ミサイル(ICBM)関連施設に対する限定攻撃だ。韓国に駐留する米軍約2万8千人は陸軍が主体で、限定攻撃の中心は在日米軍や米本土から投入する戦力が想定される。


 その主軸となるのがトマホーク巡航ミサイルだ。ピンポイントで爆撃できるのが特徴で、米軍が4月6日にシリアのアサド政権の空軍基地を攻撃した際も地中海東部に展開した駆逐艦が59発のトマホークを発射した。4月25日に韓国・釜山(プサン)に入港した原子力潜水艦ミシガンはトマホーク154発を装備する。


 ただ、北朝鮮の軍事施設は多くが地下で防護されており、1994年の北朝鮮核危機でクリントン米政権が攻撃を思いとどまった一因とされる。南北軍事境界線付近に展開された北朝鮮軍の長距離砲など300門以上がソウルを標的にしており、本格戦闘になれば100万人規模の死傷者が想定される


米領グアムや米本土から展開されるB2ステルス爆撃機は、地中深くの施設を打撃する特殊貫通弾「バンカーバスター」を搭載可能。米戦略爆撃機が北朝鮮周辺空域で、自衛隊機や韓国軍機と訓練を繰り返しているのは、北朝鮮にこの能力を見せつける目的がある。アフガニスタン駐留米軍が4月13日に同国東部で投下した大規模爆風爆弾(MOAB)の使用も有力な選択肢となる。


 航空戦力ではこのほか、周辺の米軍基地からF16戦闘機も爆撃に参加する可能性が高い。在日米軍では三沢飛行場(青森県)に約50機を配備。これに韓国の烏山(オサン)米空軍基地配備のF16など約100機が加わる。今年1月から岩国基地(山口県)への配備が始まった最新鋭のF35ステルス戦闘機の投入も考えられる。


 朝鮮半島有事となれば、自衛隊は米軍と行動を共にすることが想定される。平時は情報共有や米艦防護で連携し、事態の進展に伴い米軍に対する燃料補給などの後方支援や、潜水艦の警戒・監視を行うほか、場合によっては機雷除去を担う可能性も出てくる



 自衛隊は対潜水艦戦や機雷除去に関し、装備や練度で有数の実力を持つと自負する。これを担うのが「いずも」などヘリコプター搭載型護衛艦や哨戒機。朝鮮戦争時に機雷除去に当たった海上保安庁の部隊の流れをくむ掃海隊は、母艦を含む27隻を擁する非戦闘員退避活動(NEO)では、おおすみ型輸送艦の出番も考えられる


ただ、対米軍後方支援は、集団的自衛権が行使できる「存立危機事態」でなければ数々の制約が伴う。給油や弾薬補給は戦闘地域で行えず、武器使用も相手の出方に応じたものでなければならない。米軍や韓国軍を狙った機雷の除去もできない。


 国土防衛では、弾道ミサイル対応が重要になる。自衛隊は平時から海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の二段構えの防衛態勢を敷いている。


 ミサイルと並び、工作員によるテロも脅威となる。潜水艇で上陸してくる可能性があるため、自衛隊や海上保安庁が中心となり、沿岸部の監視を強化する。潜入済み工作員によるテロを防ぐため、原発をはじめとする重要施設の警備強化も必要となる。


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