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時代を見通す日本の基礎情報

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「日本の常識は通用しない」土地取得に大気汚染…国境以外でも迫る“隣人”

変わるか日本 参院選】外交・安保(3)

 外交問題は国境だけに限らず、「内憂」ともいえる事態も招いている。

 「どうなっているのかさっぱり分からない。問題が大きくなり、商売ができなくなるのは避けたい」。新潟県庁(新潟市)にほど近い中心部。約1万5千平方メートルの広大な空き地を眺めながら、隣接するゴルフ練習場の支配人、伊藤久男さん(64)がつぶやいた。

 昨年3月、中国側が今は賃貸ビルに入居している総領事館の移転・拡張のため民間の所有者から取得する契約を結んでいたことが判明した土地だ。水面下の売買が表面化すると一気に波紋が広がった。国会でも問題視されたが、市は「土地がどういう状況かも確認していない」とお手上げだ。

 新潟市では平成22年にも中国側が市有地の小学校跡地(約1万5千平方メートル)を総領事館の移転用地として取得しようとしたが、住民の反対で頓挫していた。同時期に尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で中国漁船衝突事件が発生。地元の対中感情も悪化した。当時の地元自治会会長、高野陽子さん(57)は「あの事件で中国は日本の常識が通用しない国と思った」と話す。

 中国の在新潟総領事館の移転先候補地となり、地元住民による反対運動が巻き起こった小学校跡地。下校途中の小学生が「お父さんはこの学校を出たんだよ」と言いながら眺めていた=新潟市中央区(大竹直樹撮影) 中国駐新潟総領事館は土地取得について「特に申し上げることはありません」としている
住民の不安は今も解消されていないが、参院選での各党の動きは鈍い。地元選挙区のある候補者は「それほど大きな争点にはなっていない」と話した。

 安倍政権が誕生して以降、中国との新たな懸案がにわかに首をもたげた。

 5月5日、北九州市。健康への悪影響が懸念される微小粒子状物質「PM2・5」など国境を越える大気汚染対策を話し合う日中韓環境相会合が開かれていた。中国では年明けからPM2・5による大気汚染が深刻化。その大気は西日本に飛来し、各地で国の基準値を超えた。「越境汚染」。だが、会場に“主役”の中国環境保護相の姿はなかった。「四川で起きた大地震への対応のため」との理由も歯切れは悪かった。

 会合では事務レベルで定期的に情報交換することが決まったが、2カ月たった今も開催のめどは立っていない。「越境汚染対策に向けた橋頭堡を築けるはずだったのだが」。環境省の担当者は遅々として進まない現状を憂えた。

 3月5日に国の基準値を7割上回る1日平均59・4マイクログラムを観測した熊本県荒尾市。荒尾四ツ山幼稚園は同日のお別れ遠足の時間を短縮せざるを得なかった。境信博園長(47)は「大切な思い出になるはずだったが、子供たちは不安そうにマスクをし、時間が短くなって残念がっていた。早く解決してほしい」と訴える。

 東京農工大の畠山史郎教授(62)=大気化学=は「今は風向きで日本の濃度は下がっているが、秋以降は中国からまた風が吹き込み、問題が再燃するのは間違いない」と指摘した。

 尖閣諸島の領有権を主張する中国竹島(島根県隠岐の島町)を不法占拠する韓国、拉致問題に背を向ける北朝鮮…。そして、日本固有の領土である北方領土を不法占拠しているのがロシアだ。「民主党政権下では足踏み状態だったが、少し光が見えた気がする」。北方領土歯舞(はぼまい)群島出身の柏原栄(さかえ)さん(82)は、安倍晋三首相(58)が4月に北方領土交渉の「加速化」でプーチン大統領と合意したことに期待を寄せる。だが、国後(くなしり)島で生まれた元郵便局長、六本木兵治(ひょうじ)さん(90)は「参院選の公約であまり触れられていない」と嘆く。

 作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏(53)は「国民が日常的に外交や安全保障に不安感を覚えること自体、政府や外務省が国民、国益を守っていないことの証左。政治と官僚がしっかりしなければならず、今は政権を安定させることが重要だ」と話した。(大竹直樹、五十嵐一)

 ■PM2・5

 大気中に浮遊する直径2・5マイクロメートル(髪の毛の太さの30分の1)以下の極小の微粒子。炭素成分や硝酸塩、硫酸塩などが含まれる。工場や車の排ガスなどから発生するとされ、通常のマスクも通してしまうほど小さいため肺の奥まで入りやすく、大量に吸い込むとぜんそく、肺がんなど健康被害を引き起こす懸念がある。国の基準値は1立方メートル当たり1年平均で15マイクログラム、1日平均で35マイクログラム、1時間平均で85マイクログラム。

 ■北方領土

 北海道北東端の択捉(えとろふ)島、国後島、色丹(しこたん)島、歯舞群島の総称。第二次世界大戦終結後の昭和20年8月に侵攻したソ連軍が9月5日までに占領し、今もロシアが不法占拠している。26年のサンフランシスコ平和条約で放棄した千島列島に北方領土は含まれておらず、日本は返還を求めているが、ロシアはメドベージェフ首相が大統領時代を含め2回、国後島に乗り込んでいる。北方領土には終戦時約1万7300人の日本人が居住していた。4島の総面積は約5千平方キロで福岡県とほぼ同じ。

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