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世界第2位の経済大国となった中国は、東南アジアでの投資を増やし、日米と競いながら影響力を強めようとしている。ただ、中国は南シナ海での領有権を強く主張しており、周辺各国と緊張関係にある。それが最も顕著なのがフィリピンだ。
中国政府は義援金10万ドル(約990万円)の提供を約束し、中国赤十字社も10万ドルを提供すると発表。これは他の経済大国と比べると極めて少ない。
日本は1000万ドルの資金協力とともに、国際緊急援助隊を派遣。オーストラリアは960万ドルを寄付した。
「中国指導部は寛大さをアピールする機会を逃した」。こう語る香港城市大学のジョセフ・チェン教授は、「中国は台風被災者に支援を申し出たが、その規模は(フィリピン政府との)険悪な関係を反映している」と指摘した。
中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」でさえ、今回の対応をめぐり、政府の国際的立場に与える影響に懸念を表明。解説記事で「中国は責任ある大国として、当該国との関係にかかわらず、被災した隣国を支援するため、救援活動に参加すべきだ」と主張。さらに「中国の国際的イメージは、国益にも極めて重要。今回フィリピン政府に冷たい態度を取るなら、中国は大きな損失を被ることになる」と強調した。
8日にフィリピン中部を襲った台風30号で、レイテ州タクロバンは壊滅状態になり、当局者らは同市だけでも死者数は1万人を超える可能性があるとしている。
このような状況を受け、フィリピンは国際的な支援を要請。米国は空母ジョージ・ワシントンなどを派遣するとともに、2000万ドルを拠出することを決めた。
中国外務省の秦剛報道局長は、状況が深刻化すれば、さらなる支援を検討するとしたが、他国より支援金が少額にとどまった理由については明らかにしなかった。
秦氏は台風30号により中国でも少なくとも7人が死亡し、7億3400万ドルの経済損失が出たことに言及。「中国も今回の災害で被害を受けた。われわれはフィリピン国民が直面している苦難を理解しており、心から同情している」と語った。
シンガポールの東アジア研究所のLye LiangFook氏は、領有権問題と災害支援をめぐる問題は切り離せないとコメント。「政治的に信頼が欠如している。現状では、中国が支援の拡大を検討していることが極めて重要だ。2つの問題は互いにリンクしている」と述べた。
一方、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、中国政府による支援に反発する意見が相次いでおり、「彼らに何も与えるな」「過去に十分与えている」などと書き込まれた。
前出のチェン氏は、中国国民の感情が政府の決定を左右している可能性を指摘。「自然災害支援は、政治的関係に影響されるべきではないと思う」とした上で、「中国当局は国内のナショナリストの感情によって、不利な立場に置かれている。中国はイメージアップのためにこの機会を利用すべきだった」と付け加えた。