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小笠原「新島」誕生で富士山の火山活動に与える影響

小笠原諸島の西之島近くで、11月20日、40年ぶりの海底噴火により誕生した新たな小島が、その後、噴き出した溶岩流が島全体に流れ出ているため、着々と「新島」化している。早くもYahoo!地図には、まだ“点線”扱いだが、新島らしき形状の島が表示されるなど、ネット上では、日本の領海が“少しだけ”広がった喜びの声で溢れている。

 だが一方で、今回の新島誕生が「大地震の予兆」と危ぶむ声が根強くあるのも事実だ。前回、西之島で噴火があった1974年には、死者30人を出した伊豆半島沖地震(マグニチュード6.8)が起きるなど、マグニチュード7レベルの地震が多発。さらには、今回の新島誕生とは別に、今夏の記録的猛暑や大型台風も頻繁に発生したため、これらの要素を巨大地震の「予兆」に結び付けようとする噂が後を絶たないのだ。

 武蔵野学園大学教授の島村英紀氏が話す。
小笠原「新島」

写真/海上保安庁 11月26日撮影



「そもそも、大地震の前兆と言われる『宏観(異常)現象』自体、私はまったくの俗説と考えています。特に、今夏の『異常高温』など気温については何の関係も認められない。というのは、例えば東京の地下水の温度が1年中15度であるように、地上でいくら気温が高かろうと地下数kmには何の影響もない。ただし、気圧や雨が地震に影響を及ぼすことはあります。現に、大西洋の真ん中に位置するアゾレス島では、雨が大量に降ると地震が起きる傾向にあり、すでに気圧が低くなると地震が起きるという論文も存在している。今回噴火の起きた西之島近辺はまだ噴火中の状態。今後、火山活動がさらに活発化し、新島が今以上に大きくなるようなことがあれば、さらに上のステージに入り、マグニチュード8クラスの巨大地震が西日本で起きる可能性が浮上してきます」

 しかも、今回の噴火は富士山の火山活動にも影響を与える可能性があるという。島村氏が続ける。

「実は、富士山から南に向かって、箱根、伊豆大島、三宅島、八丈島、さらに南下して鳥島、そして今回の西之島へと火山列が連なっており、その先には1952年に大爆発を起こし、31名の犠牲者を出した明神礁がある。この南北に連なる火山列は、太平洋プレートがフィリピン海プレートにちょうど潜り込む場所に当たり、今回に限らず、4月にも三宅島で火山性の群発地震が発生し、時を遡れば1605年に八丈島が大噴火しています。小笠原諸島付近では、昔から同じメカニズムで海底火山の爆発や地震が繰り返されており、今回、新島ができたエリアは、10年で1mもプレートが動き、巨大な地震エネルギーが蓄積されているのは紛れもない事実。実は、世界ではマグニチュード9を超える巨大地震が、東日本大震災を除いて過去5回起きましたが、その4年以内に地震が起きた付近で火山が噴火しているデータもあり、この関連性に則れば、富士山が6回目のケースになる可能性もある。富士山のもっとも最近の噴火は宝永の大噴火(1707年)。300年以上にわたって富士山が噴火しなかったことはなく、むしろ、長い目で見れば現在の静寂は極めて珍しいことなのです」

 東日本大震災の影響で、日本列島を中心に大きな地殻変動が起こったというが……。新島誕生のお祝いムードに水を差したくないが、しばらくは注視が必要な気配だ。

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