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時代を見通す日本の基礎情報

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尖閣危機 元自衛隊幹部が描く悪夢のシミュレーション(その1)

政権移行期にあたり、日中両政権が意地になった

山口 本誌九月号に掲載された我々の対談「暴発か、成熟か 軍拡中国の行く末」が大好評だったと編集部にいいくるめられ、再び引っ張り出されることになった。

香田 我々もおだてには弱い。

山口 冗談はさておき、昨年九月十一日に日本政府が尖閣購入を決定してから一年が経過する。今日は、尖閣問題をめぐり改めて浮き彫りになった日本の防衛制度の不備について議論したい。まずは尖閣をめぐるこれまでの動きを簡単に振り返ってみたい。

香田 尖閣をめぐる日中の対立と現場での衝突は、戦後初めて日本が独立国としての主権とは何であるのか、領有権とは何であるのかという問いを真正面から突きつけられた事象である。
 まず、ことの発端は二〇一〇年九月、尖閣諸島沖で違法操業していた中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件だ。中国人船長は公務執行妨害容疑で逮捕されたが、最終的に不起訴となった。
 法治国家は自国の領土・領海・領空で自国の法律を執行できるからこそ主権が保たれるのである。明らかに違法行為のあった船長に日本の法律を適用することで、世界に対して日本は尖閣に主権があるということを発信できる機会でもあったのだ。ところが当時は中国をこれ以上刺激してはいけない──といった本質とはズレた議論がなされ、及び腰の対応になった。このため、日本は尖閣をめぐる自らの主権感覚の弱さを世界に発信した格好になった。

山口 この対応をめぐり、日本国内では民主党政権の弱腰外交を批判する声が高まった。それが二〇一二年四月に石原慎太郎都知事が尖閣購入をいいだすきっかけにもなったのだろう。
 民主党政権にとっての不幸は、政権交代後、普天間をめぐり日米同盟にヒビを入れたことなどを背景として外交・安保政策に対する信用を失ったことだ。そんな中で中国船長の事件に対しても中国を刺激したくないという気持ちから及び腰に見える対応をとったことで、さらに負い目を持つことになった。
 これを受けた野田政権は、これ以上に弱腰外交という批判を受ける訳にいかず、今度は、逆に強硬になり、国有化に乗り出すことになる。国による尖閣購入に際し、胡錦濤国家主席は野田首相に対し、断固反対だと怒りをあらわにしたとされる。ところが、そのわずか二日後、日本政府は国による尖閣諸島の購入を閣議決定した。こうなると中国も振り上げた拳を下ろすことができなくなる。

香田 日本政府は、地方自治体が領有するよりは国の管轄とすることで、日中関係のトゲにならないようにする……というメッセージを送ったつもりだった。ところが、そうした日本政府の意図がまるで中国側に伝わっていなかった。パイプがなかったということか。これほど単純なメッセージすら中国に伝わらなかったのだとすれば、それ自体が日中関係の冷え込みを端的に物語っているように思え、鳥肌が立つ。ともかく結果的には日中関係は悪化した。

山口 また、日中ともに振り上げた拳を下ろせなくなった理由には、双方の国が政権移行期にあたっていたということもあるだろう。日本でいえば野田首相が「近いうちに」解散と宣言したのは昨年八月だ。そう遠くない将来、総選挙になることが分かっていた。このため、尖閣をめぐっては弱腰の外交姿勢を見せるわけにはいかなかった。

香田 安全保障について、また、中国に対して慎重だったはずの民主党が、あの時期には自民党より強硬な姿勢を見せた。主権については一切交渉さえしないといった原理主義者のようになり、凝り固まってしまっていた。

山口 一方の中国も最高指導者が胡錦濤氏から習近平氏になる直前の出来事であった。そういう時期には国民に対して弱腰の姿は見せられない。両国ともにそれぞれに事情があったということが不幸を招いた。

香田 同感だ。ただ、本誌九月号で詳しく議論したが、北京にとって尖閣は最優先事項ではない。交易の要所である南シナ海の確保のほうが東シナ海よりはるかに重要だ。チベットやロシアとも問題を抱えている。国内の暴動も気がかりだ。日本や米国に対して、中国から荒業をかけてわざわざもめ事を増やすことが得策であるはずもない。日本国内で大騒ぎされているほど尖閣をめぐり日中間は緊迫していない。

山口 今年一月には海上自衛隊の護衛艦が、中国海軍艦艇から射撃に使う火器管制レーダーを
照射された事件が発生し、大騒ぎになったが、以後、同様の現象は起きていない。ここ半年は比較的落ち着いている。北京にとっても尖閣問題は沈静化させたいというのが本音なのだろう。

香田 このため北京が突然、冒険主義に走ることは考えにくい。そうはいっても、日本側の防衛態勢に不備があれば、その間隙を突くという軍事的誘惑心を引き起こさせる危険はある。

山口 その通りだと思う。江戸時代、窃盗は厳罰だったが、戸締まりをしていない家の場合は減刑されたという。相手に付け入るスキを与えた側にも責任があるということだ。日本の自衛隊法を含めて制度の欠陥について、この際確認しておく必要があるだろう。

■■自衛隊出動への高い壁が中国にスキを与える

香田 現在、尖閣周辺を守っているのは主に海上保安庁だが、法律によって海保に規定されている任務とは海上の安全と治安の維持である。つまり領土や領域の防衛、警備という任務はない。近年、大挙してやってくる中国漁船に対応するために、厳密にいえば海保は法律をはみ出している側面もある。海保に問題があるのではなく、海保を支える法律的な根拠がないにもかかわらず、海保に頼らざるを得ないから無理をさせているということだ。
 海保に領土、領域の防衛ができないなら自衛隊を出せという威勢のよい意見もあるが、自衛隊の出動には高いハードルが課されている。八月中旬、政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が、法整備をするよう提言する方針を固めたとされるが、今日はいま一度、この現実を論じておきたい。

山口 自衛隊法には「主たる任務」として、日本防衛のための防衛出動が、「従たる任務」として国民保護、治安出動、災害派遣などが定められている。
 首相が防衛出動を下令するためには、安保会議に諮問し、閣議にかけたうえで国会の承認を得ることが必要だ。その条件は、現に武力攻撃を受けるか、それが切迫しているということだ。
 防衛出動が下令された後、さらに、自衛権行使のために武力を使用する上では、第一に我が国に対する急迫かつ不正の侵害があること、第二にこれを排除するために他に適当な手段がないこと、第三に必要最小限度の実力行使にとどまること、という三要件を満たさなければならない。
 また、ここでいう武力攻撃は、外国からの計画的、組織的な攻撃とされ、いわば本格的な武力進攻を想定した規定になっている。ここに相手に付け入られるスキが生まれるのだ。

香田 ひとたび防衛出動が下されれば、後は国際法の戦争法規等を基本に行動することになるので、相手が大砲を撃てば、こちらも大砲を撃てる。
 問題は、防衛出動に至る前、つまり平時の場合、自衛隊には警察権と同程度の権限しか認められていないという点にある。治安出動であっても海上警備行動であっても武器などの使用は一般国民を相手にしている警察権と同じで、基本的には認めないという規定になっている。
 そうなると現場でどういうことが起きるかといえば、極めて怪しい武装集団がいても、その集団を拘束しない限り、何者であるか分からないということになり、それが軍隊であるという認定ができない限りは「平時」とみなされ、自衛隊は武器の使用ができない。ところがその怪しい武装集団が中国人民解放軍の特殊部隊だった場合、相手は中国の規則に基づいて行動するので、遠慮なく自衛隊を狙って撃ってくることができる。これは極めて恐ろしいことである

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