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政府から小中高の学校、特別支援学校の臨時休校要請が出され、部活動の自粛も促された。この流れによって高校の全国大会も次々と中止が決定。2日には3月25日から埼玉・熊谷市で開催予定だった全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会の中止も決まった。
この大会は毎日新聞社も後援している。センバツは同じく毎日新聞社が主催していることから、出場校の面々は気が気でない様子だ。「まさか、本当に中止となってしまうのではないか」。政府要請にならってメディアからの取材も断り、部外者との接触を避けながら黙々と練習を続ける東日本の某代表校の選手たちは学校関係者とともに不安をのぞかせていた。
確かに開催されるか否かもハッキリしない状況となり、もしかしたら今取り組んでいるセンバツに向けた練習が無駄に終わってしまう可能性もある。その思いが選手たちに戸惑いを生じさせ、中には「センバツ出場が決まって大喜びしていたにもかかわらず僅か1カ月後に一旦白紙へと差し戻されたことで天国から地獄へと突き落とされたような気持ちになり、精神的に不安定になって練習を休んでいるメンバーもいる」というからハレーションは大きい。
大会運営について何らかの方向性が示されるとみられる4日の運営委員会を前に「もし無観客なら緊張感もなく練習試合のようになってしまうだけだし、出たくない」と涙ながらに本音を吐露する選手の声も聞いた。
とはいえ、センバツ開催への風当たりは非常に強い。インター杯など3月に開催予定だった高校の収容大会が軒並み中止となる中、強行される大会は全国選抜高校テニス大会ぐらいだ。だが、同大会も団体戦の開催は断念せざるを得ない状況となっていたのも事実。野球も言うまでもなく団体競技だ。そう考えればセンバツだけ通常開催で特別扱いされることは道理に反する。
それでも大会主催者側としては何とかギリギリまで粘り、最悪でも無観客試合での開催強行を目論んでいるようだ。だが、たとえ無観客になろうともセンバツの強行開催にはさまざまな罹患リスクがつきまとう。一番の理由は試合を行う選手、監督、コーチら両軍ベンチ入りメンバーの人数が圧倒的に多い団体競技であること。加えて期間中、全国各地から爆発的な人数のメディアも大挙して押し寄せる点である。
今さら説明するまでもないだろうが、センバツと夏の甲子園は主要メディアだけでなく各地方に拠点を置く支局や地方マスコミにとっても一大イベント。国内のスポーツ大会において間違いなくセンバツの取材人数は夏の大会とともに最大規模を誇る。
それだけの人数が試合前後に甲子園に集まることを想像してほしい。確実に取材現場は混沌と化し、ラッシュ時の満員電車のような光景になる。例年、高校球児の取材スペースはお世辞にも広いとは言えない場所で行われており、これだけでも感染リスクは〝危険度マックス〟と指摘せざるを得ない。
センバツ代表校の指導者からは「政府の警戒する感染者クラスター(集団)が次のクラスターを生むという負の連鎖を作り出してしまうのではないか。そこに子供たちを〝同居〟させてしまうのは非常にリスキーだし、正直怖い」との声も上がっている。
ところが、大会主催者側は報道陣の人数削減にどちらかといえば否定的だ。日本高等学校野球連盟(高野連)の関係者も「地域密着の要素が強い高校野球の全国大会で地方レベルの報道にまで網羅させるためには、取材人数を減らすわけにもいかない。無観客でも大会をやるとなれば、盛り上がらないことを防ぐ意味でも取材人数に関しては今まで通り目をつぶらなければいけないところもある」と打ち明ける。こうした発言を聞くと、いかなる形であっても開催する以上はやはり営利主義に走らなければならない実状があるようだ。
すでに2月28日からセンバツの前売りは始まっている。開催に関する方向性が未だ定まっていないことで〝見る側〟〝やる側〟ともに混乱と困惑にさいなまれているのが現状だ。「開催が決まっても練習を中止しているところもあれば、特に自粛していないチームもある。当然、練習試合はキャンセルになってしまったし、人数が少ない代表校は紅白戦もできず本番まで実戦も組めない。今の状況で開催しても、チーム事情や自治体の考えによって有利不利で大きな差が広がると思う」と前出の高野連関係者は頭を抱える。
いずれにしても運営委員会が開かれる4日はセンバツ代表校にとって出場決定の吉報を受けた日と同様、いやそれ以上に運命の日となりそうな気配だ。