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韓国では現在、元慰安婦の救済事業が放置されたままになっている。元慰安婦らに払われるはずの「支援金」が、受給希望者に行き渡らないケースが生じているというのだ(朝日新聞デジタル 6月9日付)。
2015年の日韓合意で設立された「和解・癒やし財団」は、日本が拠出した「10億円」を財源に元慰安婦47人に1人1億ウォン(900万円)、同199人の遺族に各2000万ウォン(180万円)の「支援金」を支給する事業をスタートした。
それを受け、元慰安婦36人と同71人の遺族が支援金を申請。生存している元慰安婦では、元慰安婦らの支援施設「ナヌムの家」の居住者ら11人を除いた全員が受け取りを希望し、実際に受給が始まった。
ところが、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的」に解決するとした日韓合意を文在寅政権は事実上破棄。昨年11月には、日本の同意もないまま同財団の解散を決定した。これにより支援金の支給がストップし、現在も元慰安婦2人と遺族13人が受け取れていないという。
文政権の一方的な「財団解散」により生じた事態を、なぜ、韓国政府は放置しているのか。
「韓国歴代政権は、左派・右派政権を問わず『慰安婦問題』を政治的な重要課題として関心を持って取り組んできましたが、『慰安婦』のおばあさんたち自体にどれだけ関心を持っていたかは疑問です」
そう語るのは、著書『韓国「反日フェイク」の病理学』(小学館新書)が話題の韓国人作家・崔碩栄氏。「ナヌムの家」に象徴されるように、頼るべき家族や親戚のいない「元慰安婦」の生活を直接支援しているのは政府ではなく、“民間有志”なのだという。
「元慰安婦の支援を民間に任せきりにするのはリスクがあります。今年5月には元慰安婦のおばあさんに渡るべき韓国政府からの支援金を横領した人が起訴されました。計2億8000万ウォン(約2565万円)という巨額のお金を332回にわたって横領していたのは『後見人』の70代の男だったのです。
そもそも、90代と高齢の元慰安婦のおばあさんたちが、財産管理のようなことができるはずはない。政府は自ら責任を持ち、民間支援団体や個人の後見人と完全に切り離した『支援施設』を作って生活サポートや医療支援に注力すべきではないでしょうか」(崔氏)
崔氏がそう主張する理由はもう一つある。
「民間支援団体は『慰安婦問題』で日本に謝罪と賠償を求める“政治活動”を主にしています。元慰安婦のおばあさんを救うことが目的の団体が、雨や雪が降る寒い中でも強行される日本大使館前のデモ活動や、長時間のフライトが強いられる欧米などでの政治活動の場に、なぜ高齢のおばあさんたちを引っ張り出すのでしょうか。
長年、彼らの支援を受けている元慰安婦のおばあさんたちは、団体側の言いなりになってしまっている。それはおばあさんたちのためではない。政治活動と切り離すためにも、韓国政府が自らやるべきなのです」(崔氏)
つまり韓国政府も民間支援団体も本質的には元慰安婦に支援金を渡して救済するより、韓国人の反日感情を煽ることに注力しているのだ。韓国が主張する「慰安婦問題」とはそもそも何の解決を目指しているのだろうか。
【プロフィール】チェ・ソギョン/1972年、韓国ソウル生まれ。高校時代より日本語を勉強し、大学で日本学を専攻。1999年来日し、関東地方の国立大学大学院で教育学修士号を取得。大学院修了後は劇団四季、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなど日本の企業で、国際・開発業務に従事する。その後、ノンフィクションライターに転身。著書に『韓国人が書いた 韓国が「反日国家」である本当の理由』、『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(以上、彩図社)、『「反日モンスター」はこうして作られた』(講談社)など。最新刊は韓国の「反日」の正体を検証した『韓国「反日フェイク」の病理学』(小学館新書)。