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リスクマネジメントの観点から、最近はソーシャルメディアの利用についてガイドラインを定める企業が増えてきた。ただし、ガイドラインはあくまでも指針にすぎず、それを守らなかったからといって直ちに処分するのは難しい。また、社員にアカウント開設を禁じるガイドラインはやりすぎだ。会社に黙ってアカウントを開設していたという理由で処分すれば、逆に会社のほうが訴えられかねない。
法的に重要なのは、ガイドラインより就業規則だ。浅見隆行弁護士は次のように解説する。
「一般的な就業規則には、会社の信用を毀損してはいけないという遵守事項があります。投稿内容が信用を著しく傷つけるものであれば信用毀損行為に該当するので、解雇も含めた処分が可能。たとえば食品を扱う店なのに不衛生な行為をしたり、ホテルで宿泊客の情報を漏らしたというケースは、会社の本質にかかわる部分なので、厳しい処分も可能でしょう」
就業規則に職務専念義務を明記しておけば、就業時間中に投稿していた従業員を処分できる。ただ、これは程度問題。1日中投稿しているなら処分しやすいが、移動中に投稿する程度なら、従業員から訴えられたときに処分が無効になるおそれもある。
問題は、バカッターの主役がアルバイトという点だ。アルバイトは雇用の流動性が高く、クビになっても次の職場を探しやすい。そのため懲戒処分が抑止力として働きにくい面がある。
アルバイトの悪ふざけ投稿を防ぐためには、懲戒処分とは別の抑止力が必要だ。まず考えられるのは損害賠償請求だ。「賠償が認められるのは、廃棄した商品代や清掃代などの実費のみ。店の売り上げと利益が下がっても、投稿との因果関係を認めてもらうのは困難」(同)というが、賃金の高くないアルバイトにとっては、数万~十数万円の損害賠償も十分な痛手になる。
刑事告訴も選択肢の1つだろう。業務に支障をきたす投稿であれば、業務妨害で告訴することも可能。業務妨害は3年以下の懲役または50万円の罰金だ。投稿した本人は、業務を妨害する意図はなかったと主張するかもしれない。そこで鍵を握るのが社内教育だ。
「業務妨害になると思わなかったという言い逃れをさせないために、過去に悪ふざけ投稿が引き起こした事例を事前に教育しておくことが大切。それが抑止にもつながります」(同)
損害賠償や刑事告訴の可能性があることを事前に教育しても、おそらくバカッターを完全になくすことはできないだろう。従業員の投稿が炎上した場合に取るべき対応について、浅見弁護士はこうアドバイスしてくれた。
「投稿が広がらないように従業員に削除させるべきですが、黙って削除すると、こんどは『隠蔽に走った』と炎上するリスクが高まります。削除すると同時に、謝罪と再発防止についてリリースを出すくらいの迅速な対応が求められます」