続いて月島さんと石丸副社長のトークセッションが行われ、月島さんは「紫電改など戦闘機は好きだったが、飛行艇には興味がなかった」と執筆前の心情を暴露。開発現場のリアルさを伝えるため、100人以上の関係者を取材したことを明かしてファンを驚かせた。その上で「作品を通じて日本の飛行艇や技術力を誇りに思ってもらえれば」と語った。
消防飛行艇の開発も
救難飛行艇「US2」は海上自衛隊が5機保有し、米軍と共同使用する海自岩国航空基地で集中的に運用されている。初飛行から今年で16年。主な任務は海上遭難者の救出や離島の急患搬送だが、開発元の新明和工業では、US2の機体に改造を加えた消防飛行艇の開発を目指し、独自で研究を進めている。
US2(全長33・3メートル、幅33・2メートル、乗員11人)の最高速度は時速約580キロで、航続距離は約4700キロ。波高3メートルの荒波でも離着水が可能で、船と飛行機の両方の特徴を持つ。平成25年には、ヨットで太平洋を横断中に遭難したニュースキャスターの辛坊治郎さんら2人を救助して注目された。
同社は7年の阪神大震災で工場などが被災した経験を踏まえ、US2の機体をもとにした消防飛行艇の製造研究を開始。空からの消火活動で、ヘリコプターの約7倍に当たる約15トンの水を運ぶことができるという。開発に向けた国の作業は具体化していないが、同社ではUS2の胴体部分に水を格納するためのタンクを製造し、都市災害の発生時における効果などを検証している。
同社の石丸寛二副社長は「US2をもとにした消防飛行艇が誕生すれば、世界中の災害現場で役に立つ。広く飛行艇のすばらしさを知ってもらいたい」と力を込めた。