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中核派系全学連の拠点「京大熊野寮」にイノシシ突入 またまた大騒動…記者が見た警察当局の捕獲大作戦

京大熊野寮に逃げ込んだイノシシ=6月13日午後6時8分、京都市左京区(小川恵理子撮影)京大熊野寮に逃げ込んだイノシシ=6月13日午後6時8分、京都市左京区(小川恵理子撮影

走るイノシシに、網を持って追いかける男たち-。現場は京都市の市街地にある京都大の学生寮「熊野寮」(左京区)。6月13日、同区で目撃されたイノシシが熊野寮に逃げ込む大騒動があった。熊野寮といえば、中核派系全学連の活動拠点として知られ、警察当局が家宅捜索の際に機動隊を投入する場所だ。しかし、イノシシはそんなことはお構いなしに敷地内を約1時間にわたり、縦横無尽に疾走した。京都では大型連休中にもイノシシが街中の高級ホテルのロビーに侵入し、負傷者が出る事件があった。なぜ街中にイノシシが現れたのか。京都市内では今年、イノシシの好物であるタケノコが不作だったとの状況はあるが、果たして…。(小川恵理子)


十数人の警察官が盾やさすまたを手に


 「まさかここに逃げ込んだんじゃ…」


 6月13日午後5時半ごろ、記者が熊野寮(同市左京区)付近に到着すると、黒山の人だかりができていた。中には盾やさすまたを持った十数人の警察官がいた。


 「イノシシが走り回っているみたいです」。事件や事故の発生状況を問い合わせていた後輩記者から電話を受けたのは、その少し前。「これは騒動になる」と思い、すぐに自転車を走らせ、通りがかったのが熊野寮だった。警察官のほかに寮生や大学関係者、同じように情報を聞きつけた報道陣もいた。


 京都府警川端署によると、イノシシは同日午後4時40分ごろ、熊野寮から東南にわずかしか離れていない同区岡崎徳成町の冷泉通(市道)を走っている姿が目撃されていた。その後、自転車に乗っていた60代の男性にぶつかるなどした後、熊野寮に逃げ込んだようだった


イノシシが自転車の男性にぶつかるのを見て寮まで追いかけてきたという30代の男性は「(イノシシは)興奮しているように見えた。こんな街中にいるとは」と話した。


 現場では、警察官らがイノシシが外に出ないように寮の門を盾でふさいでいた。目撃者によると、敷地内では十数人の警察官がさすまたなどを手に行方を追っていたという。


 盾を持った機動隊員が周囲を固め、寮内に入ろうとする警察官に中核派系全学連の関係者とみられる人から「なんの権利があってここにいるんだ!」などと抗議の声が上がる家宅捜索時とは、まったく異なる光景だった


板で押さえて麻酔をブスッ


 寮生らが寮内の放送で安全のため外に出ないよう呼びかけたりする中、地元猟友会が到着。いよいよ本格的な“捕獲作戦”が始まった。


 敷地内の東西に猟友会のメンバーが分かれ、それぞれ茂みなどに潜んでいないかどうか捜索。すると東側から何やら声が上がった。急いでそちらに向かうと、間もなく茂みの中からイノシシが現れ、反対側に逃走。それを追いかけて、報道陣もまた走る。


 イノシシを追いかけた寮生の1人は「どの辺りにいるか屋上から探し、寮生6人くらいで追いかけた」と振り返る。


 「そっちに行ったぞ!」


 「めちゃくちゃ速いな」


 西へ、東へ。捕まるまいと敷地内を縦横無尽に逃げ回るイノシシと、追う猟友会や寮生。さらに、捕獲の瞬間を逃すまいとカメラや脚立を手に、その後を追う報道陣と私-。


 これが何度か繰り返された後、「どうやら建物内に入ったようだ」という声が。それから15分ほど経過しただろうか、午後6時10分ごろ、1人の寮生が現れ、こう言った。


 「1階の廊下でイノシシを確保した」


区役所職員などによると、建物内でイノシシを見つけた猟友会のメンバーと寮生の数人が、建物内にあった木の板でイノシシを取り押さえ、麻酔を打って眠らせて捕獲したのだった。


 しばらくすると、軽トラックが現れ、ブルーシートに包まれた「何か」が運び出されていった。イノシシだった。


 川端署によると、捕獲されたイノシシはメスで体長約1メートル。後に山に放されたという。


水路たどって出現か


 京都市内では、5月にも「ウエスティン都ホテル京都」の1階ロビーに体長約1メートルのイノシシが“侵入”する騒ぎがあった。


 このときは、ホテルの従業員の男性(69)がイノシシを取り押さえる際に右太ももを噛まれ、軽傷を負った。ホテル関係者は「周辺でイノシシが目撃されることはあったが、建物内に入ってきたのは初めて」と話していた。


 大学の寮に高級ホテル-。イノシシはいったい、どこからやってきたのだろうか。


 鳥獣被害の相談窓口である京都市地域自治推進室によると、京都市内の市街地でイノシシが目撃されたり、人的被害が出たりすることは年に数回はあるという。


 そもそも京都市は周辺を山に囲まれ、山間部にはイノシシが生息しているとされる。そうした上で、同室の担当者は一連の市街地での出没例について「琵琶湖疏水からやってくるのではないか」と推測する。


 琵琶湖疏水とは、琵琶湖の水を京都に引き込むための水路。琵琶湖からトンネルなどを経て、京都市東部の左京区や東山区、山科区を通っている。ウエスティン都ホテル京都と京大熊野寮はいずれも左京区内にある。ともに近くに水路が存在している。



 「山から下りてきたイノシシが水路に現れ、水路を伝って出たところが街中の見慣れない場所だった。それでイノシシもパニックになり、ホテルの中や熊野寮の敷地に入ったのかもしれない」と同室担当者。


あくまで可能性の話だが、ウエスティン都ホテル京都の事例では、直前に北約700メートルの水路を泳ぐイノシシの姿が目撃されていた。


タケノコ不作が影響?


 京都市動物園の獣医、塩田幸弘さん(34)によると、イノシシは昼行性で植物の根やタケノコ、ドングリなどを好むという。ミミズやイネなどの穀物も食べるといい、「人の住む所まで下りてきて、えさを探すことは少なくない」と話す。


 市によると、今年の京都府内は大雪や春先の気温が低かったことから、イノシシの好物のタケノコが不作となった。塩田さんは、イノシシが市街地に現れた理由を「はっきりとは分からない」とした上で、「タケノコの不作だけが原因ではなく、イノシシは賢く、人が育てている農作物の味を覚えて、何度も下りてくることがある。そういったイノシシの習性も影響しているのでは」と分析する。


 京都以上に市街地にイノシシが出没し、住民が噛みつかれるなどの被害に悩まされている神戸市。同市の担当者も「イノシシは賢く、人間から食べ物を与えられると、山で餌を探さなくても人間からもらえると学習してしまう」と語る。


 京都市は「被害、目撃ともに年に数件ということもあり、今すぐに対策を講じないといけないという事態ではない」(地域自治推進室)と、今のところ市街地に下りてくるイノシシへの対策はしていない。
しかし、イノシシは気性が荒く、何も危害は加えなくても襲ってくることがあるとされる。塩田さんは「近寄らないようにするのが最もいい。遭遇してしまっても速やかに離れて」と注意を促している。


 

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