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中国、軍が習指導部に集団造反の可能性 「党籍剥奪」


昨年11月に軍幹部と握手を交わす習近平国家主席(手前左)。元ナンバー2の党籍剥奪で軍を掌握できるのか (新華社=共同)【拡大】

中国の習近平国家主席(61)が「最後の賭け」に出た。収賄などを理由に、人民解放軍の元ナンバー2、徐才厚・前中央軍事委員会副主席(71)の党籍を剥奪したのだ。徐氏は、江沢民元国家主席(87)に近いとされる。権力基盤が盤石ではない習氏としては、軍を掌握して独裁体制を敷こうとする狙いのようだが、共産党や軍の反発は避けられない。今後、集団造反という事態もありそうだ。

 「まさに一か八かだ。成功すれば習氏は絶対的権力を手にできるが、今回の処分で、党や軍の現役だけでなく長老までも敵に回した。党や軍の幹部で汚職をしていない者はいない。壮絶な権力闘争が始まるだろう」

 中国事情に精通する評論家の石平氏はこう分析した。

 習指導部は6月30日、徐氏に党籍剥奪処分を下した。1970年代末に始まった改革開放以降、制服組の最高位を務めた軍首脳経験者が失脚したのは初めて。今後、徐氏の身柄は党の規律部門から検察に送られ、軍法会議への訴追手続きに入る。

 習氏が議長を務めた政治局会議では、中央軍事委員会の規律検査機関がまとめた徐氏の捜査結果が報告された。規律違反の内容として、国営新華社通信は「職務の権限を利用して、他人の昇進を助けて賄賂を受け取った」と指弾した。つまり、軍の階級を賄賂で売りさばいていたわけだ。

 収賄額は明らかにされていないが、香港紙は、徐氏がかつての最側近で、2012年に汚職疑惑で軍総後勤部副部長を解任された谷俊山被告から、3500万元(約5億8000万円)の賄賂を受け取っていたと報じていた。谷氏は軍用地売却に絡み、総額200億元(約3300億円)超の賄賂を受け取ったとして、今年3月、収賄罪などで起訴された。
徐氏は陸軍の政治将校出身。集団軍の政治委員や、軍の機関紙、解放軍報社長、軍総政治部主任などを歴任した。江元国家主席に近く、胡錦濤前国家主席(71)の下で2004年に軍事委員会副主席に就任し、12年まで8年間も制服組のトップとして君臨した。この間、党指導部メンバーである政治局員にも選ばれた。最終階級は大将にあたる上将だった。

 習氏は就任以来、「反腐敗キャンペーン」を展開し、「ハエもトラもたたく」と宣言していた。

 「最悪の軍内汚職」と呼ばれた谷氏の事件に絡み、徐氏の疑惑も噂されていた。だが、軍では汚職が蔓延しているため、「江政権や胡政権のように、習政権も大物の徐氏には手を付けられないのでは」(軍関係者)との見方もあった。

 こうしたなか、習氏は、徐氏を「トラ」と位置づけ、水面下で綿密な準備を進めていたとみられる。習氏の盟友で、党中央規律検査委員会書記の王岐山氏が、徐氏の捜査に専念していたという情報もある。

 徐氏の党籍剥奪について、中国共産党筋は「北朝鮮の張成沢(チャン・ソンテク)氏処刑と同じくらいインパクトがある」と驚く。

 習氏は今後も「腐敗撲滅」という名の恐怖政治を続け、党幹部や軍首脳にも切り込むのか。日本に影響はあるのか。

 「月刊中国」の発行人である鳴霞(めいか)氏は「中国では軍幹部の99%が賄賂を受け取り、99%が愛人を囲っている。徐氏の次に狙われる現役軍幹部の名前も浮上している。習氏は、江氏と胡氏の本人・家族には手を付けないが、それ以外は徹底的にやる気だ。江氏率いる『上海閥』も、胡氏がトップだった『中国共産主義青年団』(共青団)も関係ない。やらなければ一般人民の不満が爆発する。突き進むだろう」と語る。
当然、党や軍幹部の反発は避けられない。

 前出の石氏は「秋の共産党中央委員会全体会議がヤマ場となる。『習独裁』に反対する勢力が集団造反を起こす可能性がある。その前に、党指導部や長老が集まって戦略的に重要な議題を話し合う『北戴河会議』が夏にあるが、激しい権力闘争となりそうだ。現状では、習氏は引きずり下ろされる可能性が大きいのではないか。日本は黙ってみているしかない。習氏が失脚すれば、日中関係は良くなるのではないか」と語っている。




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