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そこに今回の日朝協議が起きた。新潟県立大学の浅羽祐樹准教授(韓国政治)が指摘する。
「朴政権では政権の支持層が対北強硬派であることや、朴大統領の頑固な性格が災いし、なかなか北との交渉が進んでいませんでした。北朝鮮の資金源だった金剛山観光の再開(*注)という外交の切り札を持っているにもかかわらず、これもうまく使えず関係は停滞したまま。韓国拉致被害者家族は、日本の現状を羨ましく思っています」
北朝鮮の金正恩第1書記は就任後、外国首脳の誰とも公式に会談していない。このままでは日本の安倍首相が最有力候補だ。もしそうなれば、今後の朝鮮半島での韓国のプレゼンスが著しく低下するだけでなく、朴政権そのものを揺るがすこととなる。
しかも、もうすでに、その足下は怪しくなり始めている。今月4日に行なわれたソウル市長選を含む統一地方選挙では、与党が逆風にさらされた。
「ソウル市で敗れたほか、沈没船で生徒が犠牲になった高校があるソウル郊外の京畿道でも辛勝に終わった。今回の選挙結果は2017年の大統領選にも大きな影響を与えかねず、今後の政権運営が厳しく問われることは間違いありません」(浅羽氏)
もはやジリ貧となった朴政権。残された道は、「さらなる反日しかない」という。
「過去、政権がレームダック(死に体)化すると、韓国の大統領は決まって『反日』へと舵を切ってきました」(在韓ジャーナリスト)
2006年、政権終盤の盧武鉉大統領は、竹島を日本の領土とする高校教科書の撤回を要求、3.1独立運動記念日演説で「侵略戦争で独島を強占した」と事実誤認の日本批判を繰り広げた。
こうした前任者の「反日路線」を継承し、さらに加速させてきたのが朴大統領だった。就任直後から諸外国を歴訪するごとに、「日本の指導者は歴史問題で不適切な言動を繰り返している」と「告げ口外交」を展開。3月の日米韓首脳会談では、たどたどしい韓国語で友好を示そうとした安倍首相とは反対に、一切視線を合わさないという失礼な態度に終始したのだ。官邸中枢スタッフが語る。
「こうした態度には、安倍政権内からも強硬な意見が出続けています。“ここまでコケにされて黙っている必要はない”などといった声も多い」
『呆韓論』(産経新聞出版)の著者で、ジャーナリストの室谷克実氏もこう語る。
「もうここに至っては、韓国と正面から向き合って、交渉をしたりする必要は何もないのではないでしょうか。外交上、ここまで非礼な国を理解しようと、付き合う必要はどこにもないんです」
【*注】2008年、韓国人女性旅行者が北朝鮮兵に射殺される事件が発生。それ以降、韓国政府はツアーを暫定的に禁止している。
釜山国際モーターショーにあわせて5月29日に行った現代自の新車発表会。自動車関係者を驚かせたのは、新車の中身ではない。“韓国市場重視”を鮮明にした現代自の方針の転換だった。
新型車「AG」(コードネーム)は「韓国向け」に開発するという現代自のフラッグシップに位置付けた高級車。世界販売用の自動車を韓国仕様にして売ってきた現代自にとっては異例の対応だ。今年後半に発売する。
人口約5000万人の韓国市場に絞った車を出しても、大きな儲けにつながらないリスクを抱える。それでも独自車の投入を決めたのは、輸入車攻勢にくさびを打つ意味があるとみられる。
足もとの韓国内の4月の輸入車販売は1万6712台で、前年同月比25%増の勢い。3月に続いて過去最高を記録を更新した。このままの増勢が続けば、今年の輸入車のシェアは前年より2%以上伸びて、15%台を達するとみられる。
一方、現代起亜グループの2013年の韓国市場でのシェアは、前年比3ポイント程度下落し68%と7割を切った。
GM、日産も攻勢
ここぞとばかりに、攻勢をかけるのは海外の各メーカーだ。聯合ニュースによると、販売目標を上方修正する輸入車ディーラーが目立っている。
米ゼネラル・モーターズ(GM)の高級車ブランド「キャデラック」を輸入販売するGMコリアは、輸入車市場でのキャデラックのシェアを10%に引き上げる野心的な目標を示した。
日産自動車の高級ブランド「インフィニティ」の年間販売目標は従来の2倍が目標。2月に韓国で発売された「Q50」が好評で、予約待ちの顧客が出るほどという。
メルセデス・ベンツ・コリアは7年ぶりにフルモデルチェンジした新型「Cクラス」を近く正式販売するという。
韓国での輸入車人気について、中央日報(電子版)は今年2月、「愛国心で耐えてきた堤防が空しく崩れている」と伝え、国産離れをうれいている。高級住宅地で知られるソウルの江南(カンナム)地域では、区庁に登録される新規車両200台余り(1日平均)のうち170台ほどが輸入車になったことを紹介した。
昨年はトヨタ自動車「カムリ」が輸入車として初めて韓国カーオブザイヤーに輝いた。
韓国で輸入車が幅をきかせてきた要因はいくつもある。米国や欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)による影響や外国為替のウォン高といった経済環境の変化はもちろんだが、見逃せないのは、現代自の相次ぐ失態だ。
リコールなのに、はがき届かず
朝鮮日報(電子版)は驚きの現代自の不手際を報じた。
2012年に小型車「アクセント」で、電気系統の不具合で衝突時に火災が発生する恐れがあった車のリコールを実施したが、対象車の所有者にはがきで通知していなかった。
昨年10月には急ブレーキ時のスリップを防ぐアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)に腐食が見つかった大型セダン「ジェネシス」の一部について、リコールを行ったが、アクセントと同様にはがきの告知をしていなかった。
リコール対象車はあわせて約1万台。監査院が国土交通部などを対象に調べたところ、こうした不適切事例がみつかったという。
このうち今年3月現在でリコールで修理が行われた割合は、アクセントが24・7%(235台)、ジェネシス26・6%(2391台)といずれも3割に満たず、不具合を抱えたまま走り続けていた車は多かったとみられる。
「修理が行われていない車には深刻な影響が出ることも予想されている」。朝鮮日報はこう警告した
日本の自動車メーカー関係者は、「ダイレクトメールやはがきで告知をしないなんてことはあり得ない。ホームページや報道発表を含めて、できる限りの広報をとるのは当たり前のこと」と話す。リコール後のユーザーへの周知手段について、具体的に国土交通省が定めているわけではないが、日本の自動車業界では常識レベルだ。
威信をかけた高級車
自ら招いた結果とはいえ、現代自への逆風は強い。
米消費者団体専門誌「コンシューマー・リポート」の2014年の総合ランキングでは、現代自の評価は前年より2ランク落ち、23ブランド中、16位に後退した。燃費性能の「水増し」表示をめぐる米国での集団訴訟では、現代自グループが最大3億9500万ドル(約400億円)を米国の消費者らに支払うことで昨年末ごろに和解したばかりだ。
現代自が韓国市場向けに開発する新型は、前輪駆動(FF)の高級車であること以外は、具体的な性能などについて明らかになっていないが、BMWやアウディなどの高級ブランドがライバルになる見通しだ。
新車といえば、昨年春に発売したスポーツ多目的車(SUV)「サンタフェ」では、車内が雨漏りするとの訴えが続出。ユーザーの怒りをかった苦い経験がある。韓国の牙城を守れるのか。今度の新型は、現代自の威信をかけた存在になるに違いない。